水の歳事記 vol.009
新しい年を迎えるために
人のいのちに密接につながっている水。季節とともに水のある生活風景をお届けします。
御降(おさがり)や暮れて静かに濡るる松 島田清峰
日常生活の中で、神棚、お仏壇に水を上げるのは普通ですが新しい年を迎えてあらたなこころで若水を汲み、門松を飾り、注連縄(しめなわ)を神棚に飾り、水場や、かまど、お手洗いなどの日常生活の中でお世話になるところにも、うらじろをあしらった小さな飾りを飾ります。こうして家族全員の健康を祈ったものです。
標記の歌は、正月はやばや、雨が降る、雨そそぐなどの言い方は、涙を連想させるので、年のはじめから縁起が悪いと昔の人は感じたのでしょうか。お正月に降る雨を、御降(おさがり)とよんでいたのです。
近年温暖化がすすんで、関東地方では冷たい雨が降ることは少なくなりました。しかし、自然界はすべてのいのちを養い続けていくために、天空から慈愛の雨を降り注ぎ続けています。自然水が目に見ない地下や、植物の中に貯留しています。
このような恵みを感じるために、お正月は日常生活をお休みして、新しい年を身を引き締めて受け止めていくのが、「正月の行事のこころ」なのでしょう。自然界から受け取る自然水も、一年間のみんなのいのち(健康)を日々守り支えてくれているのでしょう。
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